吉村製茶場 吉村 忠夫

茶農家
ほうじ茶について語る吉村氏の写真

うちの茶農園は、私で3代目。
え?長い? 土山の茶農家はだいたいそんなもんやで。

この仕事は20歳のときからやから、40年を超えるなあ。
高校卒業したあと、国立茶業試験場(現在の農研機構
果樹茶業研究部門茶業研究領域)で2年間、
授業受けながら寮生活したねえ。
沖縄から種子島、北のほうは仙台から
茶農家や農協に勤める人とか、
お茶にかかわる人が全国から集まってたよ。

窓辺に座る吉村氏の写真

それから、畑や店舗をもってる静岡の大きな製茶問屋に
丁稚奉公させてもらって、畑の肥料から茶の製造、小売の勉強して。
静岡で一番茶の製造して、終わったら土山に戻って実家の一番茶手伝って、
その後また静岡に戻って二番茶を製造して……って。
あのころは、それだけ全国のお茶屋が元気やったんやな。
今はどこも丁稚奉公をとるなんて余裕がない、寂しいなあ。

収穫の時期は、立って寝ろって言われたもんや。
大げさやけど、それぐらいの気持ちでやれと。

ずーっとお茶に漬かってる
わけやから、“茶漬け”やな!

けど、おもしろかったな。

今、うちの畑は、滋賀で一番大きい集合茶園の
頓宮大茶園いうところにあって。
うちで作るお茶は、渋みやなしに香りがいい。
昔からお茶は、京都が香り重視、静岡が味・水色重視って言われる。
滋賀のお茶は京都がお得意さんやからね、香り重視のお茶を作ってる。

ほうじ茶を沸かしている様子
笑顔でほうじ茶について語る吉村氏の写真

もちろんうちのお茶に旨味がないってわけじゃない。

旨味は、香りに
くっついて来よんねん。

それと、指に刺さったら「あ痛」っていうくらい、
茶葉が硬くて、艶があるのも特徴。
朝宮もそうやけど、土山の茶は葉肉がごついねん。
ごつくて蒸しにくいから、
滋賀のお茶は自然と浅蒸しになったんやないかな。

蒸しは、お茶の精度にかかわる大事な工程やけど、
お茶の良し悪しを決めるのはやっぱり、葉っぱ。
肥料と天候、摘み取り時期の見極めが80%、蒸しの調整が15%。
あとは乾燥や仕上げなど、ものすごい数の工程があるんやけど、
それは5%以下やね。

朝と昼、夕と摘みとる時間で
味も香りも違ごうてくる。

たとえば、気温38度のときに摘みとったら香りも飛ぶやんか。
だから涼しいうちに収穫する、いわゆる朝採りが最高!
朝露が葉から落ちかけるくらいに刈るのがね。

ほうじ茶を見守る吉村氏の写真

収穫期は朝の3時半から昼ごろまで畑に出る。
朝はまだ暗ーいねん。

鈴鹿の山に朝日が上がると、
雲海がずばーっと出る。

それを見ながら茶を刈るのが本当に楽しい。
温泉でもあったらさらに最高なんやけど(笑)。

野良仕事には必ずほうじ茶持ってくよ。
緑茶は温かいと2時間くらいで酸化してもうて、
苦味が出てきよるんよね。
ほうじ茶は焙じたら酸化しようがないさかいに、
二日目でも三日目でも、味が変わらない。

窓辺でお茶を淹れている様子

茶葉はもちろん、うちで採れたのを使ってね。
焙じるのはやっぱり難しくて、自分でやるときれいにできないから、
専門のところに持ち込んで、
焙じてもらったのを袋に詰めて置いとく。

新芽を刈ったあとの残り芽と親葉を一緒に刈ったのが、
刈下(かりした)とか親子番(おやこばん)って呼ばれてるんやけど、
それが自家製の茶にはうってつけ。
うちの自家製茶は、みんなおいしいって言うねん。
娘には毎年送ってるよ。

この自家製茶が、これからは一晩ほうじに変わっていくのかな。
何年か後、一晩ほうじが全国に知れわたってたら、
鼻高々やね、ははは。

「うちの土山一晩ほうじ」

土山一晩ほうじ茶 瀬ノ音仕立て
(吉村製茶場)

うちの茶畑で採れたやぶきたをしっかりと寝かせて、
浅蒸しにして、生葉の香りを生かしたのが特徴やね。
焙煎は、浅煎りと深煎りを絶妙にブレンドしてる。

品種の選定から、お茶の味わい、パッケージまで、
子どもから大人まで意見聞いて、
みんなで決めた。
萎凋の高貴な香りと芳ばしい焙煎香のかけ合わせを、
ぜひ楽しんでもらえたら嬉しいなあ。

どんな時に飲むのがおすすめですか?

「仲間との語らいに」

嬉しそうに趣味について語る吉村氏の写真

家族や友人とのほっとするひとときに、
ぜひ飲んでいただきたいね。

私、趣味が旧車やねん。
滋賀で旧車クラブを作ってるんやけど、
この古民家を改装したガレージが、
メンバーのたまり場になってる。
愛車はコスモスポーツとランドクルーザ40やで。

愛車を眺めながら、仲間と語り合って、
土山一晩ほうじで一服なんて、
もう最高やね!

何とあわせるのがおすすめですか?

「チョコレート」

チョコレートとほうじ茶の写真

一晩ほうじは、紅茶のような感じだから、
洋菓子に合うと思う。
個人的には、甘さを抑えたビターチョコなんかがね。

ほうじ茶とあわせてチョコレートを食べる吉村氏の写真

うん、ビターもいいけど、
ミルクも合うね。

あったかいのもええけど、
水出しもまろやかになるから、ええと思うで。
ぬるまのところに氷を入れて、
グラスで飲んだら夏らしいやん。

  • 吉村 忠夫
  • 吉村製茶場

1958年、滋賀・土山町生まれ。農業高校を卒業後、国立茶業試験場の研修生を経て、同県の茶匠のもとで修行。土山に戻り、3代目として家業を継ぐ。海外にも目を向け、ASIAGAPを取得。趣味はクラシックカーの蒐集。

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