辻製茶 辻 正樹

茶農家

こんにちは、土山で茶農家をしている辻です。
親父とおかぁ、自分の3人でお茶づくりをしてます。
もともとはお茶と米を作る農家で、屋号は「米屋」っていうんです。
江戸時代から続いてると聞いてます。

今はお茶がメインで煎茶のほかに碾茶、かぶせ茶なんかも作ってます。
うちで育てた茶葉はJAこうかさんの「土山一晩ほうじ」の
原料になってます。

ここはお茶を加工する専用の建物で、
僕が小学生の時にできました。
子どものころ、この精揉機が大好きでね、
機械が動くのをずっと見てました。

お茶の季節になると、
ここらじゅうお茶のにおいが
したったなぁ。

地べたに摘んだ茶葉が置いてあって、
それとたわむれとった(笑)。

小さい頃、親と遊んだ記憶があんまりないんです。
ずっと仕事でしたから。
でも、雨の日だけは休みになるんです。

だから、茶農家にとって
雨の日は特別。

小さい頃雨が降ると
おかぁが軽トラに僕ら兄弟を乗せて、
スガキヤのラーメンを食べに連れてってくれたなあ。

この辺には、スガキヤくらいしか行く場所がなかったから
なんですけど(笑)。
でも僕にとっては特別でしたね。

学生時代は走幅跳の選手で、国体にも出場しました。
記録は7m50cmくらいかな。保健体育の教員免許をとって、
指導者を目指してたんですけど、就職超氷河期で。
試験会場に行ったら高校時代の非常勤の先生も試験受けに来てて
「これは競争激しいぞ、絶対受からへんな(笑)」と諦めて
役場に就職しました。

仕事は充実してましたけど、
子どもが生まれたのを機に将来のことを見据えて、

27歳で家業を継ぐことに決めました。

親父は「目で盗め」というタイプ。
だから最初のころは、わからないことが多くて、
「あの人がいいお茶作ったらしい」と噂を聞いたら、
土山の茶農家さんや茶匠さんを訪ねて、教えてもらって。

ありがたいことに、皆さん、丁寧に教えてくれるんです。
この産地ならではかもしれないですね。
いろんな茶工場見て、勉強させてもらいました。

最近、お茶を作るということが
多少なりともわかってきました。

やっぱり、お茶のおいしさを
決めるのは素材。

肥料足りてないかなとか、
蝶々がめっちゃ飛んでたら虫が多そうだから対策せなとか、
この茶園が弱ってきたから植え替えせなあかんとか。
いいお茶の葉作るには、
毎日お茶の様子を見るのが欠かせないですね。

この茶園の木、あさのかっていう品種なんですけど、
次女が生まれた時に植えたものなんですよ。

お茶の木とともに
子どもが成長するのが
楽しみでね。

実はこの木、「今年はいい出来ちゃうかな」って
自分でも手応えを感じた年があって、
そしたら、そのお茶が農林水産大臣賞をいただいて。

そりゃ嬉しかったですけど、
来年から下手なお茶出せへんなって、
プレッシャーの方が大きかったですね(笑)

「うちの土山一晩ほうじ」

土山一晩ほうじ
(JAこうか)

JAこうかさんの「土山一晩ほうじ」は、
うちで育てたおくゆたかの二番茶が原料のひとつです。
二番茶を使っているのは、気温が高い時期にとれるので
萎凋の香りが出やすいから。

萎凋の工程は手間がかかるし、加減がむずかしいところですが、
一晩ほうじの勉強会に参加したり、農家さんと情報交換をしたりしながら、
おいしい一晩ほうじを目指して研究してます。

どんな時に飲むのがおすすめですか?

「食事中に」

弟が大阪でイタリア料理店をやってるんですけど
お店で一晩ほうじを出してて、それが好評らしいんですよ。

よく考えたら、海外では発酵茶飲むもんな。
一晩ほうじは、ほかのお茶に比べて
あっさりして飲みやすいから、
食事のお茶としていいんやないかなと思いますね。

何とあわせるのがおすすめですか?

「ワッフル」

一晩ほうじは日本茶だけど、
紅茶みたいな味わいがあるから、
洋菓子が合うんやないかな。
今日は好物のワッフルを用意しました。

うん、おいしいなあ。
ワッフルいいですね。

甘いもの、好きなんですよ。
一晩ほうじには、モンブランや
チーズケーキも合うんやないかなぁ。

  • 辻正樹
  • 辻製茶

1976年、滋賀・土山町生まれ。大学卒業後、地元の役場に6年間勤務した後、家業の茶農家を継ぐ。日本茶インストラクター。学生時代は走り幅跳びの選手として国体にも出場。土山のお気に入りスポットは安井酒造場。