中村農園 中村 哲三

茶農家
笑顔でお話される中村氏の写真

うちの農園は100年くらい前からやってるようです。
実は、それがわかったのは、つい最近のことで。

うちの歴史を誰に聞いても、
知らないってずっと言われてたんですけど、
たまたま家の片付けしてたら、
100年前に静岡からお茶の機械を購入したときの
手書きの伝票が出てきたんですよ!

今、うちの茶畑は8ヘクタールですが、
僕が小学生のころは3ヘクタールほど。
どの農家もそのくらいで、のんびりお茶を作ってました。

茶畑を確認する中村氏の写真

収穫時期は手伝いに来てくれた親戚や
近所の人とごはん食べたり、
機械直しに来てくれた機械屋さんに
「まぁ、一杯飲めや」ってお酒を出したり。
今なら、まず機械を先に直せよって思いますけど(笑)、
ワイワイガヤガヤと、

にぎやかで
いい時代やってんな。

でも正直、農業はあんま好きじゃなかった。
父親が畑仕事で汚れたまま家に入ってくるのが、
当時は気になって。思春期ですよね(笑)。
だから今、僕は家に入るとき
必ずズボンを替えてます、ははは。

笑顔の中村氏の写真

父親には「好きなことしていいから、
25歳になったら帰って来てくれ」って言われて、
いずれ農業をしないといけないならと、
軽い気持ちで茨城にある農業の専門学校に進学しました。

でも、地元を離れてみて初めて、
生まれ育った環境がよかったことに気づいた。
卒業後に2年間、新規就農者の支援教室で、
技師として働いたんですけど
実際に畑を管理してみると、

作物を育てて収穫する
楽しさがわかった。

地元に帰って農業をしよう、と心に決めました。
妻とはその学校で出会いました。
妻の実家は茨城で兼業農家していて、
卒業後は栄養士として働いてたんですけど、
こんな遠いところまで来てくれた(笑)。

中村夫妻の写真

5年ほど前から取り組んでいるのが、和紅茶作りです。
紅茶も茶葉を萎凋(いちょう)させるので、
このノウハウを生かして、
一晩ほうじの試作を繰り返しているところです。

そもそも和紅茶は、趣味で作り始めたんですよ。
山の麓の日陰だと、お茶の芽はちょっとしか伸びないんですけど、
そういうのを手で摘んで、手もみして発酵させて。

2017年にそれをお茶のコンクールに出してみたところ、
運良く賞をいただいた。それから俄然楽しくなったんです。

大事にしているのは、
茶葉の個性を引き出すこと。

例えば、お茶にもその地域特有の在来種があるんですが、
各地の個性があるから、面白い紅茶が作れると聞いたんです。

土山に在来種の茶畑がないか探し回って、
ようやく見つけて、借り受けて、農薬・化学肥料を使用せずに、
在来種の茶葉を栽培しています。

本棚に並ぶ日本茶に関する書籍の写真

緑茶はある程度機械化されたので、
基本的なことを間違わなければ、失敗しない。
でも和紅茶は、まだそこまで確立されていないし、

手と感覚が出来を左右する。

それが難しいけど、面白いところでもあるんです。

それと、和紅茶は完成してからも熟成していくので、
半年後に香りがフワーっと上がってきたりする。
作った時がゴールじゃなく、そのあとの変化も含めて面白いんですよ。

実はもともと、あまりお茶は飲まなかったんです。
でも紅茶を作るようになって、お茶のことはもちろん、
その周辺部分をしっかり勉強せなあかんと。

急須でほうじ茶を淹れる様子

妻には事後報告ですけど(笑)、急須や茶器を集めたり、
独創的なお茶を取り寄せて、
自分でお茶を淹れて飲むようになりました。
でも、ついつい葉っぱや水色を観察したり、
このお茶はどうやって作ったのかな、とか考えちゃう。

だから、お茶を飲む時間はまったくリラックスできないです、ははは。

「うちの土山一晩ほうじ」

今、萎凋の試作と研究をしているところで、
うちの一晩ほうじの製品化はもう少し先になりそうです。
和紅茶のノウハウを生かして、萎凋にはこだわりたいですね。

萎凋の工程は、やっぱり手間がかかります。
刈る時期で葉の大きさも違いますし、
気候によって葉が持つ水分量も変わる。

気温や湿度、葉の状態を見ながら、混ぜたり、風量を調節していきます。
なので、夜中は2、3時間おきにチェックする。
妻には「子どもが夜泣きしても起きなかったのに、
お茶の時は起きんねな(笑)」って言われちゃいました。

「いがまんじゅう」と土山のほうじ茶の写真

萎凋の香りのするお茶には、あんこが合いますよ!

これは「いがまんじゅう」っていって、
近所の和菓子屋さんで買ってきたまんじゅうです。

あんこが合うっていうのは、
在来種の和紅茶を扱ってくれている
東京のカフェのオーナーさんが教えてくれたんです。
桜の花を漬けた「桜あん」がうちの紅茶に合うよと。

ほうじ茶を飲む中村氏の写真

それ以来、レシピを聞いて、うちでも時々桜あんを作って、
和紅茶とのペアリングを楽しんだり、
お客さまにもあんこを使ったお菓子をおすすめしています。
だから、土山一晩ほうじにも合うと思いますよ!

ホットはもちろんですが、
すっきりとした水出しもいいですね。

  • 中村 哲三
  • 中村農園

1977年、滋賀・土山町生まれ。茶業と水稲を営む中村農園の5代目。高校卒業後、茨城の農業専門学校に進学。その後、学校の農場に技師として勤務。24歳で中村農園にて就農。趣味は写真で、愛機はNikon D7100とRICOH GR。

中村哲三氏の写真

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